ちょっと物知り博士のちょこっと講座
第3回 日本のインターネットの状況を考える
コンピュータソフト開発を行なっている事業所にあって日々、コンピュータにタッチしている人にとって、「インターネット」はごく身近なものであり、お客様とメールで資料のやり取りをする、ブラウザを使って日報を上げる、ホームページを検索して技術資料を手に入れる、ソフトウエアFTPサイトへアクセスして安い(shareware)あるいは無料の(freeware)ソフトを手に入れる(download)、ECストアで安いコンピュータを探してインターネットで注文する、あるいはどこかのWEBで競馬の予想を参考にする、パチンコの新機種の情報を得る、等々。
まさに「私たち」にとっては、インターネットはまるで、【空気】 のような存在で、世の中おしなべて同様であろうと感じている。
今、日本の政府が、IT、ITと騒いでいるのがどこか滑稽な感じがするのは、筆者だけではないと思える。
特に2000億円の費用をかけて国民に、インターネットの使い方を勉強してもらう体制を作るのだといった政策を国会に上程しようとしたことなんぞは、「バカかいな」と思ったものです。
本当に国を挙げて取り組まなければならないような問題なんだろうか。官僚の入れ知恵か、アメリカあたりから押し付けられたのかそれとも、中央のどっかの業界から強いPUSHがあったのだろう…と思っていました。
私事で恐縮だが、最近、筆者の学校時代の同窓生と連絡を取る必要があり、今までどおり往復はがきで通信文を作成し、返信にE-MAILのアドレスを記入してもらうようにして、どれくらいの人がE-MAIL を使っているのか調べることが出来る機会がありました。
全ての人が返事をくれたわけではないのですが、結果 42歳から53歳くらいの年代の同窓生 87人のうち E-MAILを使っている人は14人にとどまっています。割合にして 16%です。
さらに、これらのアドレスに対してE-MAIL を送ったところ、返事が来たのは、わずかに7人でした。
このことから全体のことを推し量ることは危険なことだとは思いますが、少なくも 筆者の年代では、インターネットが日常的に使われる状態には無いといえます。
翻って、同様の件で学校へ行って、教授に伺ったところ、ここ3,4年の学生は、友達同士の通信手段にe-mail、ことに携帯電話でのe-mail が主流だし、論文の作成は基本的に全てコンピュータを使い、就職活動の手始めはブラウザを駆使して企業のホームページを閲覧し選定するのが常識になっているとのことだ。
さらに、先般、筆者の関係する学校が主催する学会に出たとき、あちこちの大学の教授、助教授、講師、助手の先生と片っ端から名刺交換を行い、75人ほどのうちから34名の名刺を手に入れ、e-mail アドレスを書き出して調べたところ全員がe-mail を使っておられました。 全ての学校が、独自のドメインを持ち、WEBサーバーを持ち、当然WEBを公開していました。(WEB の中身についてはちょっと評価しづらいですが)
郵政省の通信白書(平成12年版)に拠れば、1999年12月で日本のインターネット利用者は2706万人に達しているといわれています。 日本の人口が1億3000万人とすると普及率は約20%になります。この数字と上の筆者の身の回りの2つのケースとを総合して非常に荒っぽい計算をすると次のような普及率になるのではないかと推定します。
0から10才 | 20% |
10才代 | 40% |
20才代 | 50% |
30才代 | 20% |
40才代 | 15% |
50才代 | 5% |
60才代以上 | 1% |
一方でお隣の国、韓国の韓国ネットワークインフォーメーションの調べでは韓国のインターネット利用者は2000年3月で1393万人に達した そうで、韓国の人口4500万人から割り出すと30.9%となり、3人に一人がインターネットを利用している計算になります。
韓国では1997年以降、高速回線を安く提供するインフラが整備され常時接続があたりまえとなった現在、爆発的な普及率となった模様です。
日本ではテレビ ゲームが依然として若者に支持され、ゲームメーカの売上はコンピュータゲームよりテレビゲームの方が圧倒的に比率が高いようですが、韓国では、インターネットを通じてのゲームが非常なブームであるらしい。
また通産省の調べでは、アメリカの電子商取引(いわゆるE-C:e-コマース)の市場が2003年には165兆円を越えるのではないかと予測しています。
それに対して日本は3年後にはその三分の一くらいの規模に持ってゆきたいと想定しているようです。
冒頭の「政府はIT、ITと騒いでいる。バカじゃないか」という文は訂正しなければならないかもしれません。
コンピュータにタッチしている人たちはインターネット、IT(INFORMATION TECNOLOGY)はごくあたりまえのこと、若い学生諸君にとってはインターネットは必須の「道具、手段」 かも知れないが、日本の国には1億人のインターネットとは無縁、あるいは IT 社会から置いてきぼりにされている人がいることを認識しなければならないでしょう。
いくら IT 環境一杯のところにいても、「ワシには関係ない」とそっぽを向いてしまう人も中にはいるのでしょうが、1億人の中には、IT 環境の整っていないところへいる人、IT の利用の仕方が習得できない人も数多くいると思う。
こうした背景をもって政府がインターネット、IT に巨費を投じてIT 先進国を目指しているのを、笑ってばかりではおられない。
平成13年度予算から、むこう3ヵ年かけて、3000万世帯に常時接続の高速回線を整備、1000万世帯に超高速の常時接続回線を整備する法案が今国会に上程されます。多分国が本腰を入れるのだから、この数字は3年以内に達成できると思う。
ISI も今、毎月38000円の常時接続回線に加入しているが、これが、10000円を切った価格で1.2MB以上(現状は128kb)の高速常時接続回線を利用できるようになるだろう。現在事務所で享受しているよりもっと快適なインターネット環境が一般家庭に整備されるのだから、3年先は ことインターネットのインフラに関していえば、ばら色です。
でもねー、今のブラウザにしてもMAILにしても、いちいち、プログラムを起動し、いろんな設定をし、あれこれボタンをマウスで押しまくって、メールを送るときには、キーボードから「しちめんどうくさい」 文章を入力しなければ出来ない。
筆者とか、ISI に勤務しているコンピュータ技術者は、なんにも意識せずに、コンピュータを使える。別に難しいとも感じない。 だけど、コンピュータを使ったことの無い人、使うことを避けてきた人にとって見れば、まるで私たちが飛行機のコックピットに座ったときのような感じがするのです。全く手も足も声も出ない状態なんです。
そうした人が、日本に 1億人居るのです。 先ほど書いた、向こう3ヵ年で3000万世帯にインターネットのインフラが整備されたら1世帯あたり2.8人とすると 数字の上では インターネット人口は8000万人に膨れ上がります。 ということは、一応環境は整ったが、インターネットの「便利」を享受できない人が一気に 5300万人発生するということです。 まあ、話半分としても、いわばインターネットダルマが2500万人くらいは発生します。
この数字は、筆者のような団塊の世代をはさんで概ね前後8年くらいの年代の人口に近いのではないかな。 いわば、仕事では油が乗り切った、どっちかといえば、窓際族で、家では息子、娘にそっぽを向かれ、人生初老の域に達した人たちの総計で、この上わけのわからん インターネット、コンピュータをやらなければならん…・自殺者が増えまっせー!!!
冗談はさておき、このような状況の中で、インターネット、IT 環境では非常に恵まれた我らISI の従業員は、どんな役目を果たさなければならないか…・なーんちゃって。 「このさい、力いっぱい儲けましょう!社長」 「・・・・・ン!!!」
インターネットのインフラの整備に伴ったローカルネットワークの整備、地域の人たちへの講習、サービスの体制の整備、Contents の充実、簡単にインターネット利用出来るソフトの開発模索、等々、今のうちに目いっぱい考えましょう。
ちょうど時間となりました。又の講演をお楽しみに(もーえー???)。 それでもしつこくやりまっせ!!!